2010-07-28

人生の中のプログレ。

      
      
1ヶ月のごぶさたでございます。
      
この空白の1ヶ月の間、わたしの身に何が起こったのか?
なんと長年付き合ってきたパートナーと結婚したんですね。
      
それもハワイで。
      
ハワイ──
どこまでも青い空と海、爽やかに吹き抜ける風。
まさに地上の楽園。
ハワイ大好きなパートナーの
たっての希望で決まったハワイ・ウエディングですが、
もちろんわたしも嫌いじゃないっすよ。
      
ただ、そこはプログレ者、
「新郎新婦の入場曲は、ジェネシスの
『ウォッチャー・オブ・ザ・スカイズ』にしよう!
(あの重いメロトロンのイントロで荘厳に入場!)」といったら、
「ハワイアンとフラがあふれるパーティーにしたいの!」
と真顔で反対された…。
そんなぁ、冗談に決まってるじゃないですか…(ちょっと涙目)。
      
てなわけで行ってまいりました。ハワイ。
いやあ、あの開放感というかゆったりした空気感は
やっぱりすばらしいですね。
もちろんパーティーも盛り上がって楽しかった!
日本から来てくれた人、段取りを付けてくれた皆さん、
すばらしい会場と料理を提供してくれたお二方、
本当にありがとうございました。
      
そんな、たっぷりハワイを満喫したわたしの旅のお供。
わざわざ家から持っていったCD2枚。
      
↓ Waikiki Parc Hotel にて













                         
ジェネシス「眩惑のブロードウェイ」。
「ウォッチャー〜」の入っている「フォックストロット」も好きですが
ジェネシスで1枚、となるとわたしはこれです。
      
そして、
ハット・フィールド・アンド・ザ・ノース「ザ・ロッターズ・クラブ」。
フェイバリット中のフェイバリットにして
わたしのなかのオールタイム・ベストの座に四半世紀以上君臨する名盤。
毎年新年の“聴き初め”はこのアルバムと決めてます。
LPのUK盤に遠く及ばないCDの音質にはずっと悲しい思いをさせられてきましたが
昨年出たリマスター盤にてようやく満足。
躍動感あふれるリチャード・シンクレアのベースが戻ってきました!
「マンプス」におけるオルガンとのスリリングな絡みは
何百回、何千回聴いても鳥肌が立ちます。
      
      
…普通なら、MP3データにしてiPodなりを持っていくんでしょうけど、
これはそういうこととは全く意味合いが違うんですね。
極端な話、音楽を聴くことが目的ではないのです。
      
ホテルで聴けなくてもいい、ましてパーティーで流れなくてもいい。
人生の節目のその時に、同じ空間に共にいる、それが大事。
こちらもわたしの大切な“パートナー”。
      
青い海を眺め、爽やかな風に吹かれていても、
心に流れる音楽はプログレ。
それが我らプログレ者の心意気です。
      
      
      
      

2010-06-29

ジャッコでメシウマ〜。─「The Bruised Romantic Glee Club」Jakko M. Jakszyk

       
       
…といってもちりめんジャコではありません。
カンタベリー系をお聴きになるかたならもちろんご存知、
ジャッコ・ジャクジクであります。
       
この舌を噛みそうな名前は養父がポーランド系ゆえなのだとか。
ポーランド風に発音すると“ヤッコ”となるそうですが
彼自身は英国人なので英語的に“ジャッコ”と名乗っているようです。
       
日本語的にはどちらにしてもうまそうな名前。
(冷や)ヤッコに(ちりめん)ジャッコ…
       
そういえば… あのベースの神様もちょっと付け加えたら
“ジャコ(の)パス(タ)”。
あ〜、ハラ減ってきた…
       
くだらないダジャレはさておいて、そのジャッコ・ジャクジク。
先にも書いたとおり、80年代後半以降のカンタベリーを追いかけてると
ちょいちょい遭遇するミュージシャンです。
ざっとふり返ると、スチュワート&ガスキンや
ピーター・ブレグヴァドの諸作に参加、
そのブレグヴァドやジョン・グリーヴスらと
ザ・ロッジというバンドを結成したこともありました。
90年代のそれらの活発な活動や自身のソロ・アルバムもありましたが、
その頃はデイヴ・スチュワートやブレグヴァドのよき相棒、
どちらかといえば脇役的な印象でしかとらえていませんでした。
       
しかしその印象が覆る時が来ます。
2002年に21stセンチュリー・スキッツォイド・バンドの
Vo.兼G.として来日したのです。
今までカンタベリーの人だとばかり思っていたのにこの人脈はいったい?
あとで知るのですがなんとジャッコはマイケル・ジャイルスの娘婿。
こういう繋がり方もあるのかと驚いたのを憶えています。
(マイケル・ジャイルスのまったく衰えていないドラムは
じつはもっと驚愕でしたが)。
       
そして昨年から今年にかけて、さらに衝撃的な噂が飛び交っています。
なんと、もう何期目になるか数えるのもうざったい
あのキング・クリムゾンの次期フロントマンを彼が務めるのだとか…!
御大ロバート・フリップとはいつの間にこんなに仲良くなっていたのでしょう?
       
同じく次期クリムゾンに参加するドラマーのギャビン・ハリソンは
以前からジャッコとともに活動すると同時に、
御大が目をかけるスティーヴン・ウィルソン主催の
ポーキュパイン・トゥリー現メンバー。
そして過去のCDをひっくり返してみると、
1994年に出したジャッコのソロアルバムにおいて、ハリソンのほかに
リチャード・バルビエリやスティーブ・ジャンセン、ミック・カーンといった
元ジャパンのメンバーと共演しています。
買った当時は「けっこう人脈広いんだ」ぐらいにしか思いませんでしたが、
リチャード・バルビエリはすでにポーキュパイン・トゥリーのメンバー、
肝心の御大はといえば、その同じ頃、やはり元ジャパンの
デヴィッド・シルヴィアンとコラボ活動真っ最中でした。
       
なんだか相当絡み合ってますね。
もしかしたら90年代前半ごろからすでにコンタクトがあったのかもしれません。
このあたりだれかきちんと取材してくれるとおもしろいと思うんですけど。
(ちなみに、こうやって人脈追っかけるのも
プログレの大きな楽しみのひとつなんですよね)。
       
…とまあ、そんなこと考えてるさなか発売されたのが
ジャッコの何枚目かのソロアルバム、
「ロマンティック・グリー・クラブ」。
といっても日本版がこの4月に出たのであって、
英米では2006年発表だからKC参加の噂とは時系列的に逆ですけどね。
ただ、その噂を踏まえて聴くと
なお一層興味深い内容となっていることは確か。
カンタベリー好きKC好きは必聴です
(残念ながら今回ジャパンの人は参加なし)。













                          
2枚組のこのアルバム、
DISK1は自身のオリジナル曲集、
DISK2はカバー曲集という構成。
       
まず、参加ミュージシャンがえらいことになってます。
クリムゾン関係者として、フリップ御大をはじめメル・コリンズ、
イアン・マクドナルド、イアン・ウォーレス。
カンタベリー組はヒュー・ホッパー、デイヴ・スチュワート、
クライブ・ブルックス(音楽続けてたんだ!)。
その他、盟友ギャビン・ハリソン、ダニー・トンプソンや、
個人的にツボのジョン・ギブリン。などなど…
2006年作なのですでに鬼籍に入っている人も(合掌)。
ウォーレスは2007年初頭に亡くなっているから
ほとんど最後に近い録音なのでは?
(レコーディングの日付がないので何ともいえませんが…)
       
そしてさらに、DISK2の選曲が楽しすぎる!
       
まず初っ端はソフトマシーンのセカンドからの曲。
ここではなんと今は亡きホッパー自身がベースを再演しています。
思いもかけないカタチで聴くファズ・ベースに涙。
そしてラトリッジっぽいファズ・オルガンの音色もみごとに再現され、
加えて、ここ20年来スチュワート&ガスキンでも絶対聴けなかった
デイヴ・スチュワート独特のオルガンのトーンが響き渡ります。
いや〜、カンタ好きとしてはこれだけでも買った甲斐があるってもんです。
(でもスチュワートのこのトーン… 頑なに昔の音を出さない人なんで
もしかして録音自体は古いのでしょうか???)
       
続いて「冷たい街の情景」。
全盛期のレイクに真っ向から対抗するのを避けたのか(笑)
インド風アレンジの変化球で来ました。
まあ、あの頃のレイクはよすぎますからね…
       
「ねずみの涅槃」。
ヘンリー・カウのカバーってのを初めて聴きましたよ。
なんとも恐れを知らぬというか。
ほかにもう1曲、「市民の王の九つの葬式」もカバー。
ともにカウ史上最もPOPな曲ではありますが(笑)。
「ねずみの涅槃」の中間、インプロ部はサックスの代わりに
ジャッコがギターを弾きますが、オリジナルよりヘンなリズムです!
       
「アイランズ」
やはりKCの次期フロントマンが歌うアイランズ、
とても気になるところです…。
でもこれ、わたしは気に入りました。
ボズ・バレルの頼りなげなボーカルや
即興を織り交ぜ危うさを孕んだキース・ティペットのピアノ、
マーク・チャリグのコルネットが
何とも云えない寂寥感を醸し出していたオリジナルに対して、
このカバーはしっかり構築された
完成度の高いプロダクションになっています。
メル・コリンズのフルート、サックスは流麗に流れ、
ピアノは(“即興”に対して)“アレンジの鬼”デイヴ・スチュワート。
ジャッコのボーカルもしっとりと静かに、しかも堂々と歌い上げます。
もちろん、どちらがいいかは好き嫌いのあるところでしょうが
カバーとして1曲だけを取り出して聴かせる場合は
こちらほうが素直に感情移入できるのではないでしょうか。
情感あふれるジャッコの歌声に、次期KCへの期待も膨らみます。
       
…なんだかカバーの紹介ばかりになってしまいました。
もちろん、DISK1のオリジナルもすばらしいことは強調しておきます。
歌ものあり、インストありのバラエティに富んだ内容。
でも基本的にこの人は生粋のPOPの人ですね。
ブレグヴァドほど諧謔的、グリーヴスほどアヴァンギャルド
ではありませんが、少しひねりがありつつ独特の哀感を漂わせる
味わいのあるPOPS、そんな曲が並んでいます。
       
そういえばエイドリアン・ブリューもソロはめちゃくちゃPOPでしたね。
“POP感覚を持つマルチプレイヤー”というのは
ロバート・フリップの好みなのでしょうか?
       
思うにブリューもジャッコもボーカルやギターとして以上に
右腕となるメロディーメーカーとしての採用なのでしょう。
ただ、そんな両者にも相違点はあります。
ブリューのキレた躁気質とジャッコの憂いを帯びた情感。
次期キング・クリムゾンのコンセプトは
このあたりが鍵になるような気がしていますが… はたして。
(KCにはじつはもう一つ、“飛び道具”という鍵が
あると思うんですが、それはまた別の話)
       
いずれにせよ、今までサラダなんかにちょろっとのっかって
渋くうまみを演出していたジャッコですが、
これからは主食の上にどどーんとてんこ盛りで
その味わいを堂々と主張してくれることでしょう。
       
       
       
       

2010-06-25

食材しりとり。

      
      
最近は仕事でバタバタしていてなかなか平日に料理ができません。
週末に食材買い込んで余らせても
この季節、あまり長くとっておけないのが目下の悩み。
食材をいかに効率よく消費するか。
この命題で頭がいっぱいの今日この頃です。
     
さて。
梅雨空もどこへやら、真夏の暑さだったある土曜日。
じとじと雨に降られるよりずっといいけど
それにしても暑すぎる…
こんな日はトマトと卵の冷麺でさっぱりといきましょう。
      
これ、四川料理のシェフ、孫成順さんが
以前NHKでレシピを披露していた料理。
子供の時、夏の暑い日になるとお母上がよく作ってくれたのだとか。
具材はホントにトマトと卵だけ。
肉・魚一切なしで経済的。
孫さん…ご苦労されたんでしょうか…。
今じゃあんなに立派になられましたよ、お母さん。
     
確かにとてもシンプルな料理ですが、これが侮れないうまさ。
このために薬味の香菜も用意して準備万端。
いざ。
      
↓ちなみにスープは豚肉と冬瓜のスープ。
 冬瓜もれっきとした夏野菜なんですってね。













                         
いやあ。われながらうまかった。
孫さんのお母さんありがとう。
      
しかしこのために香菜一束買っちゃったけど
いくらパートナーが大好きとはいえ
当然1回で使い切れるもんじゃないですね。
かなりあまってしまったぞ。
これは香菜大量消費メニューを考えねば。
      
というわけで翌日はヤムウンセン大盛り!
まだおかわりもあるからたんと食ってくれ。
この写真では撮影用にやや控えてますが
このあと香菜特盛りでいただきました。
      
自分で作ってみるとわかるけど
ヤムウンセンって、和えてあるタレの中に
香菜の根をすり下ろしたものが入っているんですよね。
しかもこいつは葉よりも香りが強いときてる。
タイ料理屋でヤムウンセンに乗ってる葉っぱを
ていねいに除けて食べてるパクチー嫌いの人!(じつは過去のわたし)
はっきりいってムダな抵抗です。
      
以来わたしも神経質になるのをやめました
(まあ、この日の特盛りのほとんどはパートナーが食べていましたが)。












                                          
パスタはナスと挽肉の豆板醤風味。
ニンニクの香りを移したオリーブオイルで挽肉、
次いで長ネギ、豆板醤少々を炒め、ゆで汁で乳化。
パスタを絡めて揚げ焼きしたナスをトッピング、
ネギみじんといりゴマをパラッとかけてできあがり。
      
常々思うんですが、基本的に中華とイタリアンって似てるよね。
いかにしてオイルに香りを付けるか、というベースの方法論が一緒。
あとは極端な話、ごま油をオリーブオイルに、生姜をニンニクに変えたら
簡単に中華がイタリアンになるし、その逆もしかりです。
上述のトマトと卵の冷麺も見た目からしてイタリアンっぽいしね。
     
そのせいか、わたしのなかでは
中華作ったりイタリアン作ったりっていうのが
違和感なく共存してる感じ。
たとえば、たまに和食を作ろうなんて思うと
けっこう頭を切り替えないといけないんですが、それが必要ないというか。
和食が苦手なのはこのあたりも関係してるかもしれません。
      
閑話休題。
さてさて、その日の晩メシ。
香菜はヤムウンセン第2ラウンドでほぼ食べ尽くせそうだ。
彼女がまた小田原へ行っているので、メインには干物を買ってきてもらおう。
副菜は、、、お。ナスが1本。
ナスでもキュウリでもどうして安売りは3本単位なんですかね。
たいてい1本余るんだけど。
それじゃあ、こいつは揚げ浸しにでも。
合わせるのはシシトウといきたかったんですが
ヤムウンセンで使い切れなかった青唐辛子を揚げてしまえ。
よしよし、けっこういろいろ使い切ったぞ。
なんだかへんに充実感あるなあ。













                          
余った食材を次々に活用していく。これぞまさに食材しりとり。
まあ、世の奥様方にとってはごくごく普通のことなんでしょうけど。
      
でもこういうちょっとしたことが面白かったりしませんか?
これって初心者特有の多幸感ですかね?
      
まさか密かに主夫化が進行している、なんてこたあないよなぁ…
      
      
      
      

2010-06-08

わたしの人生のSFがらみ。

      
      
どうも最近、読みたいと思えるSFが見つからないわ。
というわたしのつぶやきに、すかさず隣にいたパートナーが
みんな亡くなってるからじゃない、ですと。
      
たしかになあ。プログレ界以上に高齢化が進むSF界。
ここ数年SFマガジンなんて2回に1回は追悼特集やってんじゃないか
ってくらいの印象だし(あくまでも印象ね)。
      
たとえ存命でも、むかし夢中で読んだ作家たちは
今じゃ一線を退いた雰囲気?
わたしが把握してないだけかもしれませんが。
      
いよいよ遅ればせながら、ここ数年流行ってる
“ニュー・スペースオペラ”でも読んでみましょうか?
でもあれ、どれもこれもなんであんなに長いんでしょうね〜。
レナルズなんかは1000ページ以上ですか?
歳とともにめっきり読書量(時間)が落ちてるこっちの問題でもあるんですが
手に取る気が一気に萎える物量。
キリッと引き締まって切れ味鋭いアイデア・ストーリー、
そんなSFが読みたいものです。
      
てなわけで、テッド・チャンの「あなたの人生の物語」を(何度目かの)再読。
いやあ、これはほんとにすばらしいなあ。













                         
この人、本職はテクニカル・ライターのパートタイム作家。
そのせいもあって非常に寡作。
1990年のデビュー以来、現在まで10余の短編しか発表していません
(長編は0!)。
にもかかわらずその評価はとても高く、グレッグ・イーガンと並んで
“現代最高のSF作家”と称されるほど。
最高の作家がパートタイマーってのもどうなのよって感じですが、
読めば納得。
「あなたの人生の物語」は、そんな彼の作品が日本語で読める現在唯一の本
(SFマガジンのバックナンバーは除く)にして
SFがたどりついた一つの到達点。珠玉の短編集であります。
      
まず巻頭を飾るのは「バビロンの塔」。
われわれの知る科学法則とはまったく異なる、
神話的・宗教的法則によって支配された異世界の物語。
それでもありがちなファンタジーに陥らないのは、従う法則は違っても
あくまで論理的思考にのっとって物語が進行していくから。
宗教の怖いところは信仰心と引き替えに多くの人が思考停止してしまうところ。
神がいようがいまいが実は関係ないのです。信仰心もけっこう。
人間、肝心なのは思考することをやめないその姿勢だということを教えてくれます。
      
「理解」。
ある化学療法によって知能をどんどん増強させる男のはなしを
一人称・現在形で綴っていきます。
つまり「アルジャーノン進化型」という趣向。
当然といわれればそのとおりなのですが、脳の極端な発達に伴って
身体能力はおろか感情までもが進化・変容していく様は
うすら恐ろしさを覚えずにはいられません。
しかし変化はとどまるところを知らず…。
究極にまで知能を高めた人間の末路は?
      
などなど、どの短編もすべてワクワクするような傑作揃い。
それでもやはり表題作「あなたの人生の物語」の味わいは別格でしょう。
      
よく、「SFは“人間”が描けていない」という批判をよく聞きます。
これに対して「SFは“人類”を描く」というSF側からの反論も存在したり
(まあ、噛み合ってないけど)。
それだけSFとそれ以外の文学とは相容れないものとして語られてきた感があります。
いわゆるジャンル論争は絶えないですしね。
           
しかし、この「あなたの人生の物語」こそ
そんな文学的相克を埋める作品のひとつではないかと、
わたしなんかは思うのであります。
SF的アイデアと文学的叙情が分かちがたく結びつき
他では決して味わうことのできない不思議な、でも静かな感動を呼ぶ…
しかもそれが鮮やかに短編で活写された驚き。
…これ以上は語りますまい。
あとはもう、実際に読んでいただくしかありません。
      
とまあ、長々と語ってきましたが
こんなことはすべて、世のSF読みにとっては「なにを今さら」ってはなし。
この文はSFをあまり読まない人に向けて書いたつもり。
スター・ウォーズみたいなのばかりがSFじゃありませんよ。
あるいはクラークやディックばかりでも。

巨匠も確かにいいんですが、
SFに限っていえば「過去の名作より今の凡作」。
“未来の文学”を標榜する以上、“未来”に一番近い場所は“今”ですから。
(余談になるけど、分水嶺はソ連邦崩壊あたりでしょうかね。
メタファーの対象の転換とコンピューターの一般への浸透がでかい)
       
もちろん、それが「今の傑作」ならいうことなしってわけで。
         
う〜ん、“1000ページ”はどっちなんだ?
あのボリュームで凡作はさすがにしんどいぞ〜。
        
          
           
            

2010-05-17

渋谷からの哀悼。─「Masques」「X-RAITED!!」Brand X─

      
      
またしても訃報です。
      
ケイト・ブッシュやポール・マッカートニー&ウイングス、
マイク・オールドフィールドなどなど、さまざまなミュージシャンの
アルバムに参加したことで知られるパーカッショニスト、
モーリス・パートが4月27日に亡くなったそうです。63歳でした。
      
70〜80年代、ロック系アルバムでパーカッショニストといえば
ほとんどこの人の名前だったんじゃないか、ってくらい活躍していましたね。
ソロや自身のバンド(サントレッダー)での活動も見逃せませんが
このブログ的には何といってもブランドXを語らないわけにはいきません。
      
以前、わが心の師パーシー・ジョーンズについて少し触れたことがありますが、
いうまでもなくその彼が在籍したバンドがブランドX。
そこに2nd.アルバムから参加し、以後ずっとパーカッショニストとして
バンドを支えたのがモーリス・パートでした。
      
特にアルバム「マスクス」発表前後、
リズムの中心だったフィル・コリンズ不在の窮状を救ったのは
このモーリス・パートだといっても過言ではないでしょう。
      
この「マスクス」においてリズム面の主導権を執っているのは
間違いなくモーリス・パートの多彩なパーカッションです。
コリンズに代わり参加したチャック・バーギ(後にレインボーに加入して
知られることになるドラマーですが、最近ではビリー・ジョエル・バンドの
メンバーとして来日。びっくりしましたねー)はシンプルなドラミングに徹し、
パートが自在に動き回るスペースをお膳立て。
縦横無尽のパーカッションとキープに徹するドラムにより、
このバンドの売りでもあるジョーンズとのスリリングなリズム・アレンジと
かつてなかった(気持ちのいい)ノリのよさを両立しました。
さらにパートはコンポーザーとしてもすばらしい楽曲を提供。
演奏作曲両面におよぶ彼の活躍によって、
ブランドX史上まとまりは随一ではないでしょうか。
メンバー一丸強靱なアンサンブルを叩き出す
完成度の高い傑作アルバムに仕上がっています。
      
↓ LPはその昔、貸した友人もろとも行方不明に(元気ですかー?)。
 数年前に出た紙ジャケは中身が同じなので未購入。
 乞う!リマスター!













                          
そして、その「マスクス」発表時(1978年)
ニューヨーク・ボトムラインでのライブを収録したブートレッグ「X-RAITED!!」。
「マスクス」からの曲を中心にしながらもこちらはうって変わって“破壊的な”傑作。
こちらもモーリス・パートの魅力をたっぷり堪能できますが、
それだけにとどまらず、わたし的には“これぞブランドXの最高傑作!”と
密かに思っている1枚なのです。
ドラムはマイク・クラーク、さらにギターはマイク・ミラーに変わっていて
メンバー全員、手数の鬼となり暴走に次ぐ暴走!
すべての曲でアドリブ合戦を展開!スタジオアルバムにおける演奏時間の
倍くらいの長さになっています(1曲目と5曲目はほぼ20分)!
全編70分以上、常に飽和状態の音数、アンサンブルは崩壊寸前。怒濤の疾走感。
そしてここでもイニシアチブを握っているのはモーリス・パートです。
完全に“イっちゃってる”ソロはあのジェイミー・ミューアを彷彿。
アルバムよりはるかに手数が多くイマジネーション豊かな
パーカッション・プレイで他のメンバーを煽る煽る。
ピーター・ロビンソンのキーボードがさまざまな音色で空間を駆け巡る中、
パーカッションに対抗するパーシー・ジョーンズの
調性無視の変態ベースはいつも以上のあばれっぷり。
あのヘッドハンターズのマイク・クラークも、パートにせき立てられて
タイトな手数重視の高速プレイで突っ走ります。
      
ブートにしては音質もまずまず。
高音がバリバリ割れますが、ギターの音などむしろ迫力が増して結果オーライかも。
このマイク・ミラーという人物、ジャズ・フュージョン系の人らしく
押し引きを心得たプレイを聴かせるものの(ただ一人冷静なプレイ?)
正直、グッドソール(によるロックからのアプローチ)ならどうだったろう、
と思わせる瞬間があるのは確か。
このへんが唯一残念なところでしょうか。
      
ただ、生粋のジャズ・フュージョン系プレイヤーが2人もいる中、
その手のいわゆる“フュージョン・サウンド”に流れていないのは、やはり
即興をしてもジャズに根ざさないパート、ジョーンズの
資質によるところが大きいでしょう(現代音楽家としても活動するパートと
中近東趣味を押し立てるジョーンズ)。
ジャズとロック、その他雑多な音楽要素のぶつかり合い、
この混沌こそジャズ・ロックの真骨頂!
危ういバランス(アンバランス)、爆発力、疾走感、すばらしすぎます。
ブランドXはコリンズがいなくてもすごいのだ!
      
↓ なんというお下品なジャケットとタイトル。
 でもジャケ写をむりくり切り貼りした他のブートに比べたら
 まだ“ひねり”が感じられる?













                         
その昔、ブランドXというと必ず
“米国ジャズ・フュージョンに対する英国からの回答”なんていう
煽り文句がくっついてきて、よくリターン・トゥ・フォーエバーなんかが
引き合いに出されていましたが、どうもピンと来ませんね。
(わたしの場合は順序が逆だったので、その後RTFを聴いたときに
見事に期待がはずれてしまったわけです。今なら、求めるものが違うと
わかりますが…。音楽ジャーナリズムも罪作りです)。
要はそんな型どおりの枠で捉えられないごった煮、
それがブランドXだったのです。
      
少々ジャズ方向に傾いた公式ライブ盤「ライブストック」は
今ひとつ物足りない…というあなた、そして
「マスクス」はカッコイイけどちょっと予定調和だな…と感じるあなた、
「X-RAITED!!」はそういうかたにぜひ聴いてほしい音源です。
といってもブートなんであまり大きな声ではいえませんね。
というか、今でも入手できるのだろうか…?
      
ノヴァがジャズ・ロックの世界を広げてくれたバンドだとしたら
ブランドXはわたしのジャズ・ロック遍歴の原点となったバンド。
じつをいうと、あまりにも愛しすぎているので
どのようにまとめようかと悩みつつブログに上げるのを避けていました…
それがこんな形でアップすることになるとは。
      
このバンドについてはまだまだ語りたいことがたくさんあります。
しかしそれはまた、改めて。
      
今はただ、モーリス・パートの生み出した音に耳を傾け、
冥福を祈りましょう。
      
      
      
      

今夜は、プログレッシブないと♪

          
         
先週の日曜日は、このブログにたびたびご登場いただいている
Yさんをわが家にお招きし、音楽鑑賞会。
なんとYさん、筋金入りのプログレ・マニアなんですね〜。
知り合ったばかりの時はそんな気配などまったくなかったんですが
(それはお互い様)、ひょんなことから発覚。
お〜、こんなところにいたかプログレ・ファン!(だからお互い様だって)
今ではこうしてたまに鑑賞会を開いたり一緒にライブに行ったりしております。
         
で、この日のお題は… 「クリムゾン・キングの宮殿」研究!
Yさん所有の「デビュー40周年エディション」を
延々一日中聴きまくろうという企画。
なんたってこの40周年エディション、ライブ音源などもありますが、
ほとんどが1枚のアルバムのマスタリング違いやミックス違い、
ヴァージョン違いなどの6枚組。基本的に曲はいっしょなのです。
まさにファンには至福!そうじゃない人には理解不能の鑑賞会。
この時パートナーはまだ八戸に…
じゃなきゃできませんよ、こんなこと。
         
↓ よ、四角い顔! …でかい。













                          
研究結果。
これは奇跡の傑作です。以上。
         
こんな歴史的名盤に今さら語る言葉などありません。
個人的に好きな作品は他にたくさんありますが
客観的に考えて1969年にしてこの完成度は神懸かりとしか思えない。
         
ボキャブラリーの乏しさからか
ついつい「神」とか「奇跡」なんていう言葉を使いがちですけど
基本的にそんなもの信じちゃいない根っからの不信心モノのわたし
(本厄で厄払いもせずアキレス腱を切った男!)。
それでも唯一この作品を表現するときだけは
それが安易なレトリックじゃなく、文字通りの意味に思えてきます…
やっぱりこのアルバムは特別です。
         
そして今回の目玉、スティーヴン・ウイルソンとロバート・フリップによる
2009年リマスター・バージョンがまたすばらしい。
         
わたしもご同輩同様、悪名高い“クリムゾン商法”には騙され続けてきたクチ。
1999年リマスターも2004年リマスターも持ってますが
これはまったくの別物といっていいでしょう。
         
中でもDVD Audio/5.1チャンネルミックスがすごい!というのが
もっぱらの噂。しかし残念ながらわが家の貧弱なサラウンド環境では
ポテンシャルが引き出せません。というわけでCDでの再生ですが
それでも十分楽しい!
         
なんといっても各楽器の分離と定位感が抜群に向上。
「21世紀のスキッツォイド・マン」における冒頭のヘビメタ部、
あのひしゃげ、歪んだボーカルやギターの音塊にも
立体的な音の重層感を聴き取ることができます。
そして白眉は「ムーンチャイルド」、インプロヴィゼイションの臨場感。
ひとつひとつの音が溜息の出るような繊細さで空気をふるわせ、
その空気を共有しているかのようなリアルさを持って伝わってくる。
1969年と2010年、イギリスと日本。時間と空間を超越する瞬間です。
         
ロバート・フリップには今までさんざん貢いできたわたしですが
いいかげん足を洗おう!とこの40周年エディションはシカトしてました
(2004年リマスターや既発のライブ音源との抱き合わせは露骨すぎる!)。
でも実際に聴いちゃうと、やっぱりいいんですよね〜。
2009年リマスター1枚だけ別売りしてくれたら即買いなんですが…
DVDとの2枚組なら販売してるので、そちらを買ってしまおうか?
DVDはいらないんだけど…
         
あれ、やっぱり騙されてる?
これぞ一度はまったら抜け出せないプログレ地獄。
         
宿っているのは神だけじゃなかったよ。
         
         
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そてにしても聴いた聴いた。
午後2時から夜の11時まで。9時間ノンストップ宮殿三昧。
         
日が暮れてからはYさんの奥様もいらっしゃって
食事をしながらの鑑賞会。
奥様はもちろん、プログレのプの字も知らないまともなかた。
無理につきあっていただきました。
ヘンな夢でうなされたりしてないですよね?
         
この日のディナーは前日から仕込んでおいた中華料理。
         
↓ 前日仕込んだ東坡肉。この状態で1日寝かします。
 一緒にゆで卵をつけ込んでみた。













                           
↓ こちらも仕込んどいた清湯。
 これでトマトと卵のスープを作るのだ。













                         
↓ 棒々鶏の茹で鶏は、湯に紹興酒、ネギ、生姜を入れ
 12〜3分茹でたら火を止めそのまま冷ます。
 保存もゆで汁とともに。これで鶏もしっとりやわらか。













                          
家からは少し歩くんだけど
笹塚のクイーンズ伊勢丹が皮付きの豚バラ肉を扱っているのは
以前からチェック済み。
いつか東坡肉を作ってやろうと狙っていたのです。
初めてにしてはまずまず成功? ほっと一安心。
         
ただ、チャレンジはこれだけ。
あとは麻婆豆腐、チャーハンなどで安全運転。
お客さんに食べてもらう料理、
事故ったら取り返しがつきませんからね〜。
         
Yさんご夫婦からは炊き込みご飯、タケノコまるまる1本
(灰汁抜きしていただきました。多謝!)、
そしてバームクーヘンのおみやげを。
Yさんからは以前モルトのボトルをいただいてますし。
うむむ、ますますプレッシャーが(笑)。
         
↓ いただいた烏骨鶏バームクーヘン。卵の甘み。味が濃い!













                         
おみやげはどれもおいしくいただきました〜。
中華のほうはどうだったでしょうか?
         
へたなプラモデルといっしょで
自分で作って満足しているぶんにはいいんですが
人のためにっていうのはまだまだ居心地が悪いんだよね。
         
         
         
         

2010-05-07

せんべい汁、いまだ食えず。

      
      
パートナーの生まれ故郷、北の港町、八戸へ。
      
5月3日から三日間、彼女の実家に厄介になってきました。
      
天気にも恵まれ、気持ちのいい過ごしやすい気候。
今年は例年より少し遅いそうですが、ちょうど桜が
満開から散り際にいたる美しい時を迎えていました。
      
しかし! 座右の銘は「花より団子」!
八戸といえば、やっぱり「うますぎる魚介の数々」なのだ。
今回2回目の訪問ですが
私見ではわたしの故郷新潟よりも上。完敗です。
        
            
初日は腹がはち切れんばかりの刺身を堪能。
翌日は朝からぷりぷりの焼き魚。
もう魚は食えません…と思ってたら二日目の晩はこれですよ。













                           
まるまると太って堂々としたこの姿を前にしたら
プリン体なんて気にしちゃいられません。
一人一杯!ぺろりと平らげ、さらに追い打ちをかける天ぷらにビール。
やばい、止まらない…!
                  
ご両親はほとんどお酒を飲みませんが、
わたしみたいな飲み助がこんなところに住んだら
間違いなく成人病まっしぐらですね。
               
              
さらにさらに、最終日のお昼に連れて行ってもらったのは
海沿いにぽつんと建つ海鮮料理屋。













                          
古〜い船宿の趣。なんとも雰囲気があります。
シーサイドのドライブ・ロードから
細い細い砂利道を入っていってその一番奥。
知らなかったら、まず通り過ぎてしまうでしょう。
             
↓ 海に面してる、ていうか半分飛び出してます。













                          
で、刺身、蟹、ときたらシメはこいつ。
「ウニ丼」。













                          
生ウニバージョンと蒸しウニバージョンがありましたが
わたしは後者で。
ウニは好きだけど生でどっさりはちょっと…
というわたしのような人は意外と多いのでは?
うれしいメニュー構成です。
          
味はもちろん申し分なし。
ふんわりと卵で綴じてありますが
その味付けは控えめでちゃんとウニの味わいを活かしています。
布海苔の味噌汁も磯の香り満点。
           
          
いや〜、それにしても三日間食った食った。
全部うまかった〜。
ごちそうさまでした。
         
「でも… 八戸B級グルメの王様、東京でも有名な
あの“せんべい汁”を食べてませんが…」
         
「せんべい汁? あんなもんはうまくないぞ〜」
        
B級好きなわたしの一言を
彼女のお父さん、お母さんがバッサリ一蹴。
        
そ、そりゃそうっすよね〜。
これだけうまいものに囲まれてるんすからね〜。
         
ごめんなさい。わたしが間違っておりました。
       
       
        
        

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