2010-08-24

Heads are Burning! 〜燃ゆるご同輩〜

      
      
フジロックやサマー・ソニック。
若い音楽ファンにとって、夏はフェスティバルの季節。
わたしのようなおっさんにはあまり関係のない話だと思ってましたが
どうも今年あたりは様相が変わってきたようで。
      
フジロックにロキシー・ミュージック、サマソニにスティービー・ワンダーが参戦。
あきらかにおっさんの財布の中身を狙ってる臭いがぷんぷんします(笑)。
      
しかし頭ではそんな“仕掛け”がわかっていても、
手が勝手に財布の紐をゆるめてしまうのもまた、おっさんのサガでして。
ただ、さすがにロキシーのためだけに苗場には行けません。
そんな「夏フェス・ヴァージン」のおっさんにうってつけの企画が
22日、日比谷野外音楽堂で行われました。
      
「PROGRESSIVE ROCK FES 2010 プログレッシブ・ロックの祭典
〜めくるめく音世界への誘(いざな)い〜」
      
なんと日本で初めてのプログレッシブ・ロックのフェスティバルです。
      
参加ミュージシャンは四人囃子、ルネッサンス、スティーブ・ハケット・バンド。
3組だけっていうのがフェスとしてはちょっとさみしい気もしますが
まあ、最初ですから(次はあるのか?)。
      
てなわけで、このブログでももうおなじみ(?)、
プログレとモルトとアロハシャツをこよなく愛するYさんと二人、
行ってきました。
      
PM3:30 野音到着。
予想はしてましたが、まだまだ強い陽差しの照りつける座席は
ものすごい温度です。もちろんまわりはおっさんおっさんおっさんの大群。
危険!太陽光線に“地肌”を直撃される人多し!
思わず熱中症で搬送される人の出ないよう祈る…
わたしも帽子持ってきてよかったですわ。
      
まず一組目、四人囃子の演奏です。
すみません、不勉強で「日本の伝説のプログレ・バンド」
ということぐらいしか知りません。
音を聴くことすら初めてでしたが、かっこいい。なんか勢いがあります。
もちろんわたしらよりぜんぜん年上ですが、若々しいパワーが漲ってました。
日本のオヤジもまだまだがんばらねば。
      
続いてはルネッサンス。
ルネッサンスといえば一にも二にもアニーの歌声。
アニーといっても築地の卵焼き屋ではありませんぞ。
アニー・ハズラム。シルクのようなエンジェル・ヴォイスで魅了する
プログレ界屈指の歌姫です。
前回の来日のときは行ってないので
ソロ・アルバム(「ブレッシング・イン・ディスガイズ」)の
ジャケ写(ハイキーの加工がちょっとわざとらしい)が
わたしの頭の中のアニー直近の姿(それでも早16年前…)。













                         
おおお… ステージ上に表れた姿のあまりの肝っ玉母さんぶりに時の残酷さを痛感。
思えばアニーも還暦をとうに超えてるはず。
あの美声は聴けるのか? 不安が胸をかすめます。
      
しかし一発目、「プロローグ」の高音スキャットでそんな不安はふき飛びます。
すごい!伸びやかな高音が会場に響き渡る!
ある時はエネルギーにあふれ、ある時は優しく包み込むように歌う。
そのなんという圧倒的な存在感!(体型の話じゃないからね)
      
アンコール曲、「マザー・ロシア」。中盤の美しすぎるスキャット、
そしてクライマックスを朗々と歌い上げ、
そのままブレスなしでささやくようなフレーズを歌いきるエンディング。
全身鳥肌が立ち、不覚にも目頭が熱くなりましたよ。
Yさんと二人、ただただすごいの連呼。
      
フェス用の短いセットだったのがほんとに残念!
川崎のクラブ・チッタの単独ライブにも行きたかったですねー
(そちらが一般発売後すぐに完売してしまい、それでこっちを買ったのです)。
      
そしてトリはスティーブ・ハケット・バンド…… というところで、
MCのストレンジ・デイズ編集長、岩本晃市郎氏が
ジェネシス・ファンにはおなじみの
黒マントに逆三角のかぶり物をして登場、笑いを誘います。
でもどうせやるならマントの下に銀色のコスチュームを着ていて欲しかった!
そのくらいはやらないとあの場の客は楽しめませんぜ!
      
それはさておき、いよいよスティーブ・ハケット・バンド登場。
お、なんとハケットのほかにギターがもう一人います。
それも金髪でスタイルのいいおねーちゃん!
マイケル・ジャクソンといい、ジェフ・ベックといい
若い女性をバンドに加えるのが流行ってるんですかね。
しかし!あくまで演奏にこだわるのがプログレファン。
けっして姿形には騙されませんぞ!
…とかいいつつすでに目は釘付けになってるオヤジたち。
      
そんな彼女、残念ながら演奏自体は終始控えめ。
なんと言ってもギターはハケットがメインなわけですから、これは仕方ないでしょう。
ただし、ヴォーカル(コーラス)としての貢献度は大。
そしてこのバンド、キーボード以外みんな歌うんですね。
音域が狭く正直あまりうまくないハケットのヴォーカルをみんなで盛り立てます。
      
じつはソロになってからのハケットをそれほど熱心に聴いていなかったわたし。
初期を中心に数枚しか持ってません。
その原因の一つが、たまに入る彼のヴォーカルでした。
「自分で歌わなきゃいいのに」とずっと思っていたんですね。
ギター・サウンドや紡ぐメロディーのすばらしさには
文句の付けようがないんですから…
(その証拠(?)に、3人のすばらしいゲスト・ヴォーカリストを立てた
2枚目の「プリーズ・ドント・タッチ」は
むしろわたしのフェイバリットの一つになっているほどです)
      
しかし今回のライブでは“ほぼ全員コーラス”の力業で
ヴォーカルの弱さを克服。さらに演奏のよさ
(なかなか手数王のドラムとリッケンをバキバキ弾き倒すベース!)
との相乗効果で大迫力のかっこよさです。
      
そして言うまでもなく、ハケットのギターは唯一無二。
      
「フライ・オン・ア・ウインドシールド」では
“やっぱりジェネシスのギターはこの音じゃないとダメなんだ”と
しみじみ再認識。
そして曲の後半、ドラマーがリード・ボーカルを取り始めます。
ここでも“やっぱりジェネシスのヴォーカルは…”と一瞬頭をよぎりますが
まあそれは言わぬが花でしょう。
あんな絶対的カリスマ変態ヴォーカリストと比べられたらかわいそうです。
それに、この彼のがんばりのおかげで
われわれは最後にすばらしい贈り物をもらうことになるのですから。
      
ステージが暗くなり、流れてくるピアノのイントロ…
そう、それは「ファース・オブ・フィフス」!
      
いや〜、まさかこの曲がフルコーラスで聴けるとは!
それもドラマーの彼がヴォーカルでがんばってくれたおかげ。
…とはいえ聴き所はもちろん、すべてのプログレ者の心をわしづかみにして離さない
泣きまくるギターソロですけどね。
      
Y氏曰く「ハケットはテクニックをむやみにひけらかさない、
だけどすごいギタリストだよね」と語ってましたが
わたしもまったく同感です!
ふつう、ライブでこれだけ長いソロパートがあると
世のギタリストたちは、ここぞとばかりにアドリブのフレーズを加えたり、
無駄に小難しい技を誇示したがるものです。
しかし彼は一切そんなことをしません。
ほとんどレコードと変わらないフレーズを、しかし情感たっぷりに奏でます。
以前何かで、ハケットのそういうところが物足りないと評する人がいましたが、
的外れもいいところですね。
この曲のギターソロは、もはや手を加える余地などない、
緻密に構成された完成品なのです。
間違いなく、彼はその“完璧な美しさ”に自信を持っているのでしょう。
そしてわたしたちも、その“完成された美しいギターソロ”を聴きたいのです。
      
…「ファース・オブ・フィフス」の余韻に酔いしれながら、
ラストはソロからの曲で大団円。
会場全体拍手の渦。そしてスタンディング・オベーション。
      
みんなすばらしいパフォーマンスでした。
ただひとつだけ、残念というわけではありませんが
これをやってくれたら最高だったのに!と思ったのが
アニーとハケット二人による「リプルズ」。
彼女は以前、ジェネシスのトリビュート・アルバムで
この名曲を歌っているのです。
さすがにそれは欲張りすぎだろうというのはわかっていましたが、
心のどこかでほんのちょっと期待していたのもまた事実。
      
これはやはり、PROGRESSIVE ROCK FESが
第2回、第3回と続いていくことに期待しましょう。
そうすればいつか、アニーとハケットに限らずとも
そのような奇跡のジョイントをこの目で観、
この耳で聴ける日が来るかもしれませんからね。
      
とまあ、こうして
満足と感謝とそして飽くことのない欲望を我々の心に残し、
おっさんが最も熱く燃えた一日が終わったのでした。
      
・・・・・・・・・・・
      
さて、燃え尽きたあとは腹が減るもの。
フェスのあとは自宅近くの焼肉屋へ直行。両家の奥方を交えて夕食です。
わが家にとっては久しぶりの焼肉。
うちのパートナーは大の肉好きなんですが、
わたしが昔ほど肉食じゃなくなったもので…
      
てなこともあり、“奉行”はYさんにお任せ!
熱く燃えたハートを炭火に変えて、繰り出す華麗なトング捌き。
“しまちょう”、うまかった〜!
絶妙の焼き加減に感動です!
      
………じつはY氏、
プログレとモルトとアロハシャツのみならず
焼肉にもこだわる男だったのです。
      
      
      
      

2010-08-20

アスファルト・クローラー 2010。

      
      
暑い!暑すぎる!
      
新潟育ちのくせに寒いのが大の苦手、
そのかわり暑いのはけっこう嫌いじゃないはずのわたしですが
今年はさすがに少々バテ気味です。
      
街を歩くときに、遠回りでも地下街を歩いたり、仕方なく地上に出ても
わざわざ日陰の多いルートを歩いたりするようになってしまいました。
若いころなんて、汗をかくのもぜんぜんおっくうじゃなかったのになあ。
…おっと、これはもしかしてただ単に歳をとってしまったってことですか?
ま、歳のせいでも温暖化のせいでもくそ暑いことにかわりはないし。
今年の夏は、いつもよりしんどいわ〜。
      
ちょっと前ですが、麻布税務署と港都税事務所へ
もろもろ申告書類を提出しに出掛けたときはホント、死ぬかと思いましたよ。
電車なら一駅だし、ランチついでに歩いて行くかなんて、完全になめてました。
歩き始めて2分で後悔。
事務所のある赤坂から乃木坂を抜け六本木へと向かうルートは
微妙に青山墓地や檜町公園をはずれ、ただひたすら外苑東通りを歩くのみ。
アスファルトからの照り返しで体感温度は40度以上か。
しかも麻布税務署と港都税事務所、最寄り駅は同じ六本木でも
90°方向が違っていて、その上遠い遠い。
「国と都で管轄違うのはわかるけど、
利用者のことなんかカケラも考えとらんじゃないか!!」
と、なんだか怒りもこみ上げてくる
(そんなことは承知の上で出掛けたはずなのですが)。
      
さすがに六本木のど真ん中、熱中症で倒れてはシャレにならんと
AXISのリビングモチーフでキッチンウエアを眺めてひと休み、
ABCでファイドンの「シルバースプーン」を立ち読みしてひと休み。
ちょっとずつ休みを挟んでどうにか死の行軍を完遂。
なんか小さな達成感。でも来年はぜったい郵送にしよう…
      
おっと、そういえば昼飯がまだだった。
空きっ腹をかかえて飛び込んだのが六本木の中国飯店。
じつは酢が苦手で冷やし中華はあまり食べないのですが
ここにはゴマだれの「棒々鶏冷麺」があります。
とにかく冷たいモノを!と迷わずオーダー。
思ったより上品な味で、暑さにやられた体にはちょうどよかったかも。
とてもおいしかったです。
この日の苦行がちょっと報われた瞬間でありました。
      
この感動を忘れないうちに!
さっそくわが家でも作ってみました。
        
↓盛りつけはまったくかなわない…(味はもっとだろ)













                              
家で作る棒々鶏ソースは、どうしてもゴマの粉っぽさが残ってしまう。
どうしたら店のようなクリーミーさになるんですかね。
それと、もう一つ素朴な疑問。
白髪ネギを水にさらすとくるくるになってしまうんですが
どうすればまっすぐきれいにできるんでしょう?
普段、ニワカ知識をひけらかしてるくせに
じつはこういう基本的なことを知らなかったりするところが
日曜料理人のかっこわるさだよな…
      
翌週、残った棒々鶏ソースで「冷やし坦坦ソーメン」。
たまたま行ったスーパーにタレ付きの中華麺しかなかったんで
自宅にあるソーメンで作ってみました
(タレを残しても使うことなく捨てていたので
以前からもったいないと思っていたんですね)。













                              
上にのってる炸醤はじつは肉を使ってません。
肉の代わりはグルテンミート。
といっても嫁がマドンナ目指してるわけじゃないっすよ。
スーパーで買い物したあと立ち寄らなければいけないところがあって
この炎天下で挽肉はやばいな…と思い、試しに買ってみた次第。
細かく刻んで挽肉に見立ててみるも、このままじゃどうにもまずそうなんで
干しエビ、干し貝柱、干し椎茸の乾物オールスターを投入してます。
      
スープは昆布から取り、酒、味醂、醤油で味を調整。
      
炸醤も魚介系の乾物のうまみが主体ですし、和風のスープとも相まって、
結果、ソーメンによく合いました。
棒々鶏ソースも適度にコクをプラスしてますし。
まずまず成功じゃないでしょうか。
…相変わらずネギはくるくるしてますが。
      
それにしても、グルテンミートのおそろしいまずさにはびっくり!
乾物と甜麺醤でなんとかまとまりましたけどね。
しかしあんなもん食べるくらいなら、
豆腐のほうがはるかにいいと思うんだけど。
うまいし。安いし。
      
そうか。
よ〜く水を切った豆腐を細かく砕いて
それを挽肉代わりに炸醤作るっていうのもありかもしれないな。
今度試してみよう!
      
その炸醤使って麻婆豆腐とか。
      
ん? それってもしかして豆腐&豆腐?
      
………ただの肉ナシ麻婆豆腐じゃん!
      
      
      
      

2010-08-09

ラジオ酢豚の悲劇。

      
      
ついにNHKがやりました。
      
FMにて「今日は一日プログレ三昧」と題し
8日の午後12時15分から9日午前13時ちょうどまで、
12時間と45分間、プログレのリクエストのみをかけ続けるという
暴…いや快挙を成し遂げました。
      
前半のゲスト、KENSOの清水さんがオタ…いや、博識なのは知ってましたが
関根史織さんといううら若き女性、
Base Ball Bearというバンドのベーシストだそうですが、
なんなんですかこの子は!!
      
女性にも聴いてもらいたいかわいい曲です、とかいって
ゴングの「マスター・ビルダー」って…(笑)。
で、めちゃハマってるのがサムラ・ママス・マンナですか。
…畏るべし。
      
そして「プログレ諸国漫遊」というコーナーでは怒濤の辺境系3連発。
3曲も続けられると、どこまでがどの曲なのかまったくわからん!
しかも、唐突にフレーズが繰り返されるところなど
「さすが辺境(何がさすがだかよくわからないが)、変わった構成だなー」
と感心して聴いていたら
曲のあとにレコードの音飛びを謝ってるし。
まぎらわしいじゃないか!
      
そして極めつけの
アルタード・ステイツによる「宮殿」完コピ・生ライブ。
インプロ部分もレコード通り完全再現という、
意味ないようなあるような、この矛盾撞着ぶりがプログレっぽい。
すさまじい演奏が意味論的カオスにさらに拍車をかけます。
      
…あまりの内容の濃さにビビリながら聴いてましたが
さすがに13時間近い長丁場とあって
後半はちょっとパワーダウン。
特にラスト1時間を切ってからの選曲はもう少し考えて欲しかったなあ。
カンサス、ラッシュ、UK…。わたしも好きですが、
この時間帯でかけるべきじゃなかった。
聴いてる人たちみな、「VDGG、カーヴド・エア、(その他もろもろ
それぞれご贔屓のミュージシャンたち)」は、かかるのか?
と、固唾を呑んで待ちかまえているところに
「ナッシング・トゥ・ルーズ」じゃ、そりゃズッコケますって。
MCの山田五郎さんはカンサス、ラッシュで完全にテンション下がっちゃってるし
(彼は自ら“ヨーロッパ偏重主義”といってましたね)。
もっと番組の前半、導入のあたりで軽めにかけてくれたらよかったのに。
彼らに対するこの扱いは、わたしなんかからすると
逆に愛がないんじゃないかと思ってしまうわけです。
      
とはいえ、よくぞやってくれました。
10代のころは音楽との出会いの場としてかけがえのない存在だったラジオ。
それがいつからか露骨なプロモーションが幅を利かせるようになり
この20年余りは“ラジオで音楽を聴く”ことをすっぱりあきらめていました。
でもまあ、せっかくチューナーも買ったことだし
これからはまた、たまにラジオも聴いてみますかね。
      
      
↓プログレ三昧聴きながら作った黒酢酢豚。
 からめるタレが少なすぎて失敗。
 しかも棚から皿を出すときにあわててしまい、隣の丼が落下して大破。
 …「宮殿」生ライブをちゃんとリビングで聴きたかったんだよ!













                         

2010-08-03

星を往くもの。

      
       
またひとり、好きなSF作家が星々の世界へ旅立ってしまいました。
ジェームス・パトリック・ホーガン。
7月12日、享年69歳でした。
      
前回のブログでプログレ・オールタイム・ベストの話をしましたが、
この作家のデビュー作「星を継ぐもの」は、
わたしのSFオールタイム・ベストかも。
出会ったのは大学生の頃。
眠るのも忘れ(ついでに講義も!)一気読みしたのを憶えています。
ことこの本に関しては、以前紹介したテッド・チャンみたいに
「文学的相克が…」とかなんとかいう面倒な言葉は一切不要。
とにかく面白い!の一言!
       
月面で“5万年前に死んだ宇宙服を着ている人類の死体”が発見される。
そんな摩訶不思議な事件を発端として
全篇、謎に次ぐ謎、推理に次ぐ推理。
そして最後にたどり着く、人類、いやいや太陽系の成り立ちをも巻き込む
驚天動地の結論、さらにだめ押しの一手。
まさにカタルシスの塊みたいな小説です。
      
あまりにも面白いので、ほとんどSFを読まない人に
きっかけになればと薦めたりしたこともあるんですが
どうもいい反応が返ってきたためしがない。
これこそこの本における最大の謎といえるでしょう。
      
さらに、わたしなんかは常々
ハリウッドはホーガン作品をこそ映画化すべきだ!と思っているのですが
これまたそんな気配もないのが不思議です。
少なくともディックなんかよりよほど映画的なんですがね。
「トータル・リコール」が再映画化されるそうですが、
いいかげんもう“ディック原作のディックらしくない映画”はいらんでしょう。
      
謎解きがほとんど会議室でなされていく(笑)「星を継ぐもの」は
さすがに映画化しづらいでしょうが、他の作品、たとえば
「造物主(ライフメーカー)の掟」などは非常に向いてると思うのです。
      
“突然変異”した“自動工場”が土星の衛星タイタンで進化し
機械生命による独自の生態系を形成。
その中で最も進化したグループは文明を持つにいたり、
そのレベルは人類史における中世ヨーロッパにそっくりだった…
薄暗い氷の大地の上(でもそこには、その環境に適応した
“植物”や“獣たち”が息づく“自然”がある!〈もちろん、全部機械です〉)を
どこか中世の甲冑に似た機械たちがガシャガシャと歩き回るなんて
メチャメチャ“絵”になると思いませんか?
ちゃんとアクション場面もありますよ。
しかも、“機械生命=人類の脅威”として描くような
ありがちなストーリー展開ではありません。
むしろ怖いのは人間側の思惑。
それをなんとか食い止めようとするのが
うさんくさい心霊パワーを売り物にする詐欺師チームという設定も
ちょっとひねりが利いてます。
異世界、異様だけど愛すべきキャラクター、陰謀、アクション、
そして大団円。さらに続編もあるので当たればシリーズ化のおまけ付き!
いや〜、ヒットの要素てんこ盛りなんだけどなぁ〜。
ハリウッドのお偉いさん、どうして気付いてくれませんかね?
      
90年代以降は、度を過ぎたオプチミズムと政治思想、
果ては“トンデモ学説”に傾倒したり…と
ちょっとついて行けない感じもあったホーガンですが、
それでも初期作品の輝きが失われることはありません。
たしかに初期にも見られる楽天性は(今の目では特に)
ナイーブすぎるといわれてもしかたないでしょう
(以前提示したわたしの定義からすれば“過去の傑作”ですね)。
でも、「ホントにこんな世界になったらいいのに!」と
素直に思えた若いころの自分がいたこともまた事実。
わたしにとっては、そんなノスタルジーもちょっと込みで
かけがえのない傑作たちでありました。
      
ご冥福をお祈りします。
      
      
      
      

2010-07-28

人生の中のプログレ。

      
      
1ヶ月のごぶさたでございます。
      
この空白の1ヶ月の間、わたしの身に何が起こったのか?
なんと長年付き合ってきたパートナーと結婚したんですね。
      
それもハワイで。
      
ハワイ──
どこまでも青い空と海、爽やかに吹き抜ける風。
まさに地上の楽園。
ハワイ大好きなパートナーの
たっての希望で決まったハワイ・ウエディングですが、
もちろんわたしも嫌いじゃないっすよ。
      
ただ、そこはプログレ者、
「新郎新婦の入場曲は、ジェネシスの
『ウォッチャー・オブ・ザ・スカイズ』にしよう!
(あの重いメロトロンのイントロで荘厳に入場!)」といったら、
「ハワイアンとフラがあふれるパーティーにしたいの!」
と真顔で反対された…。
そんなぁ、冗談に決まってるじゃないですか…(ちょっと涙目)。
      
てなわけで行ってまいりました。ハワイ。
いやあ、あの開放感というかゆったりした空気感は
やっぱりすばらしいですね。
もちろんパーティーも盛り上がって楽しかった!
日本から来てくれた人、段取りを付けてくれた皆さん、
すばらしい会場と料理を提供してくれたお二方、
本当にありがとうございました。
      
そんな、たっぷりハワイを満喫したわたしの旅のお供。
わざわざ家から持っていったCD2枚。
      
↓ Waikiki Parc Hotel にて













                         
ジェネシス「眩惑のブロードウェイ」。
「ウォッチャー〜」の入っている「フォックストロット」も好きですが
ジェネシスで1枚、となるとわたしはこれです。
      
そして、
ハット・フィールド・アンド・ザ・ノース「ザ・ロッターズ・クラブ」。
フェイバリット中のフェイバリットにして
わたしのなかのオールタイム・ベストの座に四半世紀以上君臨する名盤。
毎年新年の“聴き初め”はこのアルバムと決めてます。
LPのUK盤に遠く及ばないCDの音質にはずっと悲しい思いをさせられてきましたが
昨年出たリマスター盤にてようやく満足。
躍動感あふれるリチャード・シンクレアのベースが戻ってきました!
「マンプス」におけるオルガンとのスリリングな絡みは
何百回、何千回聴いても鳥肌が立ちます。
      
      
…普通なら、MP3データにしてiPodなりを持っていくんでしょうけど、
これはそういうこととは全く意味合いが違うんですね。
極端な話、音楽を聴くことが目的ではないのです。
      
ホテルで聴けなくてもいい、ましてパーティーで流れなくてもいい。
人生の節目のその時に、同じ空間に共にいる、それが大事。
こちらもわたしの大切な“パートナー”。
      
青い海を眺め、爽やかな風に吹かれていても、
心に流れる音楽はプログレ。
それが我らプログレ者の心意気です。
      
      
      
      

2010-06-29

ジャッコでメシウマ〜。─「The Bruised Romantic Glee Club」Jakko M. Jakszyk

       
       
…といってもちりめんジャコではありません。
カンタベリー系をお聴きになるかたならもちろんご存知、
ジャッコ・ジャクジクであります。
       
この舌を噛みそうな名前は養父がポーランド系ゆえなのだとか。
ポーランド風に発音すると“ヤッコ”となるそうですが
彼自身は英国人なので英語的に“ジャッコ”と名乗っているようです。
       
日本語的にはどちらにしてもうまそうな名前。
(冷や)ヤッコに(ちりめん)ジャッコ…
       
そういえば… あのベースの神様もちょっと付け加えたら
“ジャコ(の)パス(タ)”。
あ〜、ハラ減ってきた…
       
くだらないダジャレはさておいて、そのジャッコ・ジャクジク。
先にも書いたとおり、80年代後半以降のカンタベリーを追いかけてると
ちょいちょい遭遇するミュージシャンです。
ざっとふり返ると、スチュワート&ガスキンや
ピーター・ブレグヴァドの諸作に参加、
そのブレグヴァドやジョン・グリーヴスらと
ザ・ロッジというバンドを結成したこともありました。
90年代のそれらの活発な活動や自身のソロ・アルバムもありましたが、
その頃はデイヴ・スチュワートやブレグヴァドのよき相棒、
どちらかといえば脇役的な印象でしかとらえていませんでした。
       
しかしその印象が覆る時が来ます。
2002年に21stセンチュリー・スキッツォイド・バンドの
Vo.兼G.として来日したのです。
今までカンタベリーの人だとばかり思っていたのにこの人脈はいったい?
あとで知るのですがなんとジャッコはマイケル・ジャイルスの娘婿。
こういう繋がり方もあるのかと驚いたのを憶えています。
(マイケル・ジャイルスのまったく衰えていないドラムは
じつはもっと驚愕でしたが)。
       
そして昨年から今年にかけて、さらに衝撃的な噂が飛び交っています。
なんと、もう何期目になるか数えるのもうざったい
あのキング・クリムゾンの次期フロントマンを彼が務めるのだとか…!
御大ロバート・フリップとはいつの間にこんなに仲良くなっていたのでしょう?
       
同じく次期クリムゾンに参加するドラマーのギャビン・ハリソンは
以前からジャッコとともに活動すると同時に、
御大が目をかけるスティーヴン・ウィルソン主催の
ポーキュパイン・トゥリー現メンバー。
そして過去のCDをひっくり返してみると、
1994年に出したジャッコのソロアルバムにおいて、ハリソンのほかに
リチャード・バルビエリやスティーブ・ジャンセン、ミック・カーンといった
元ジャパンのメンバーと共演しています。
買った当時は「けっこう人脈広いんだ」ぐらいにしか思いませんでしたが、
リチャード・バルビエリはすでにポーキュパイン・トゥリーのメンバー、
肝心の御大はといえば、その同じ頃、やはり元ジャパンの
デヴィッド・シルヴィアンとコラボ活動真っ最中でした。
       
なんだか相当絡み合ってますね。
もしかしたら90年代前半ごろからすでにコンタクトがあったのかもしれません。
このあたりだれかきちんと取材してくれるとおもしろいと思うんですけど。
(ちなみに、こうやって人脈追っかけるのも
プログレの大きな楽しみのひとつなんですよね)。
       
…とまあ、そんなこと考えてるさなか発売されたのが
ジャッコの何枚目かのソロアルバム、
「ロマンティック・グリー・クラブ」。
といっても日本版がこの4月に出たのであって、
英米では2006年発表だからKC参加の噂とは時系列的に逆ですけどね。
ただ、その噂を踏まえて聴くと
なお一層興味深い内容となっていることは確か。
カンタベリー好きKC好きは必聴です
(残念ながら今回ジャパンの人は参加なし)。













                          
2枚組のこのアルバム、
DISK1は自身のオリジナル曲集、
DISK2はカバー曲集という構成。
       
まず、参加ミュージシャンがえらいことになってます。
クリムゾン関係者として、フリップ御大をはじめメル・コリンズ、
イアン・マクドナルド、イアン・ウォーレス。
カンタベリー組はヒュー・ホッパー、デイヴ・スチュワート、
クライブ・ブルックス(音楽続けてたんだ!)。
その他、盟友ギャビン・ハリソン、ダニー・トンプソンや、
個人的にツボのジョン・ギブリン。などなど…
2006年作なのですでに鬼籍に入っている人も(合掌)。
ウォーレスは2007年初頭に亡くなっているから
ほとんど最後に近い録音なのでは?
(レコーディングの日付がないので何ともいえませんが…)
       
そしてさらに、DISK2の選曲が楽しすぎる!
       
まず初っ端はソフトマシーンのセカンドからの曲。
ここではなんと今は亡きホッパー自身がベースを再演しています。
思いもかけないカタチで聴くファズ・ベースに涙。
そしてラトリッジっぽいファズ・オルガンの音色もみごとに再現され、
加えて、ここ20年来スチュワート&ガスキンでも絶対聴けなかった
デイヴ・スチュワート独特のオルガンのトーンが響き渡ります。
いや〜、カンタ好きとしてはこれだけでも買った甲斐があるってもんです。
(でもスチュワートのこのトーン… 頑なに昔の音を出さない人なんで
もしかして録音自体は古いのでしょうか???)
       
続いて「冷たい街の情景」。
全盛期のレイクに真っ向から対抗するのを避けたのか(笑)
インド風アレンジの変化球で来ました。
まあ、あの頃のレイクはよすぎますからね…
       
「ねずみの涅槃」。
ヘンリー・カウのカバーってのを初めて聴きましたよ。
なんとも恐れを知らぬというか。
ほかにもう1曲、「市民の王の九つの葬式」もカバー。
ともにカウ史上最もPOPな曲ではありますが(笑)。
「ねずみの涅槃」の中間、インプロ部はサックスの代わりに
ジャッコがギターを弾きますが、オリジナルよりヘンなリズムです!
       
「アイランズ」
やはりKCの次期フロントマンが歌うアイランズ、
とても気になるところです…。
でもこれ、わたしは気に入りました。
ボズ・バレルの頼りなげなボーカルや
即興を織り交ぜ危うさを孕んだキース・ティペットのピアノ、
マーク・チャリグのコルネットが
何とも云えない寂寥感を醸し出していたオリジナルに対して、
このカバーはしっかり構築された
完成度の高いプロダクションになっています。
メル・コリンズのフルート、サックスは流麗に流れ、
ピアノは(“即興”に対して)“アレンジの鬼”デイヴ・スチュワート。
ジャッコのボーカルもしっとりと静かに、しかも堂々と歌い上げます。
もちろん、どちらがいいかは好き嫌いのあるところでしょうが
カバーとして1曲だけを取り出して聴かせる場合は
こちらほうが素直に感情移入できるのではないでしょうか。
情感あふれるジャッコの歌声に、次期KCへの期待も膨らみます。
       
…なんだかカバーの紹介ばかりになってしまいました。
もちろん、DISK1のオリジナルもすばらしいことは強調しておきます。
歌ものあり、インストありのバラエティに富んだ内容。
でも基本的にこの人は生粋のPOPの人ですね。
ブレグヴァドほど諧謔的、グリーヴスほどアヴァンギャルド
ではありませんが、少しひねりがありつつ独特の哀感を漂わせる
味わいのあるPOPS、そんな曲が並んでいます。
       
そういえばエイドリアン・ブリューもソロはめちゃくちゃPOPでしたね。
“POP感覚を持つマルチプレイヤー”というのは
ロバート・フリップの好みなのでしょうか?
       
思うにブリューもジャッコもボーカルやギターとして以上に
右腕となるメロディーメーカーとしての採用なのでしょう。
ただ、そんな両者にも相違点はあります。
ブリューのキレた躁気質とジャッコの憂いを帯びた情感。
次期キング・クリムゾンのコンセプトは
このあたりが鍵になるような気がしていますが… はたして。
(KCにはじつはもう一つ、“飛び道具”という鍵が
あると思うんですが、それはまた別の話)
       
いずれにせよ、今までサラダなんかにちょろっとのっかって
渋くうまみを演出していたジャッコですが、
これからは主食の上にどどーんとてんこ盛りで
その味わいを堂々と主張してくれることでしょう。
       
       
       
       

2010-06-25

食材しりとり。

      
      
最近は仕事でバタバタしていてなかなか平日に料理ができません。
週末に食材買い込んで余らせても
この季節、あまり長くとっておけないのが目下の悩み。
食材をいかに効率よく消費するか。
この命題で頭がいっぱいの今日この頃です。
     
さて。
梅雨空もどこへやら、真夏の暑さだったある土曜日。
じとじと雨に降られるよりずっといいけど
それにしても暑すぎる…
こんな日はトマトと卵の冷麺でさっぱりといきましょう。
      
これ、四川料理のシェフ、孫成順さんが
以前NHKでレシピを披露していた料理。
子供の時、夏の暑い日になるとお母上がよく作ってくれたのだとか。
具材はホントにトマトと卵だけ。
肉・魚一切なしで経済的。
孫さん…ご苦労されたんでしょうか…。
今じゃあんなに立派になられましたよ、お母さん。
     
確かにとてもシンプルな料理ですが、これが侮れないうまさ。
このために薬味の香菜も用意して準備万端。
いざ。
      
↓ちなみにスープは豚肉と冬瓜のスープ。
 冬瓜もれっきとした夏野菜なんですってね。













                         
いやあ。われながらうまかった。
孫さんのお母さんありがとう。
      
しかしこのために香菜一束買っちゃったけど
いくらパートナーが大好きとはいえ
当然1回で使い切れるもんじゃないですね。
かなりあまってしまったぞ。
これは香菜大量消費メニューを考えねば。
      
というわけで翌日はヤムウンセン大盛り!
まだおかわりもあるからたんと食ってくれ。
この写真では撮影用にやや控えてますが
このあと香菜特盛りでいただきました。
      
自分で作ってみるとわかるけど
ヤムウンセンって、和えてあるタレの中に
香菜の根をすり下ろしたものが入っているんですよね。
しかもこいつは葉よりも香りが強いときてる。
タイ料理屋でヤムウンセンに乗ってる葉っぱを
ていねいに除けて食べてるパクチー嫌いの人!(じつは過去のわたし)
はっきりいってムダな抵抗です。
      
以来わたしも神経質になるのをやめました
(まあ、この日の特盛りのほとんどはパートナーが食べていましたが)。












                                          
パスタはナスと挽肉の豆板醤風味。
ニンニクの香りを移したオリーブオイルで挽肉、
次いで長ネギ、豆板醤少々を炒め、ゆで汁で乳化。
パスタを絡めて揚げ焼きしたナスをトッピング、
ネギみじんといりゴマをパラッとかけてできあがり。
      
常々思うんですが、基本的に中華とイタリアンって似てるよね。
いかにしてオイルに香りを付けるか、というベースの方法論が一緒。
あとは極端な話、ごま油をオリーブオイルに、生姜をニンニクに変えたら
簡単に中華がイタリアンになるし、その逆もしかりです。
上述のトマトと卵の冷麺も見た目からしてイタリアンっぽいしね。
     
そのせいか、わたしのなかでは
中華作ったりイタリアン作ったりっていうのが
違和感なく共存してる感じ。
たとえば、たまに和食を作ろうなんて思うと
けっこう頭を切り替えないといけないんですが、それが必要ないというか。
和食が苦手なのはこのあたりも関係してるかもしれません。
      
閑話休題。
さてさて、その日の晩メシ。
香菜はヤムウンセン第2ラウンドでほぼ食べ尽くせそうだ。
彼女がまた小田原へ行っているので、メインには干物を買ってきてもらおう。
副菜は、、、お。ナスが1本。
ナスでもキュウリでもどうして安売りは3本単位なんですかね。
たいてい1本余るんだけど。
それじゃあ、こいつは揚げ浸しにでも。
合わせるのはシシトウといきたかったんですが
ヤムウンセンで使い切れなかった青唐辛子を揚げてしまえ。
よしよし、けっこういろいろ使い切ったぞ。
なんだかへんに充実感あるなあ。













                          
余った食材を次々に活用していく。これぞまさに食材しりとり。
まあ、世の奥様方にとってはごくごく普通のことなんでしょうけど。
      
でもこういうちょっとしたことが面白かったりしませんか?
これって初心者特有の多幸感ですかね?
      
まさか密かに主夫化が進行している、なんてこたあないよなぁ…
      
      
      
      

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