2011-05-02

Rendezvous 6:15

      
      
時は4月15日PM6時15分。
川崎駅改札にて落ち合った
もはやおなじみ、われらプログレ・ブラザーズ。
      
この日われわれに課せられたミッション、それは
70年代末にこの日本でも絶大な人気を誇った
英国プログレッシブ・ロック最後の徒花、
UKのリユニオン・コンサートを目撃することであります。
行って参りましたよ。
今やプログレの聖地といってもいいかもしれません
川崎クラブチッタ!













                              
振り返れば…
ここに至るまでの道程は長かった。
      
そもそも再結成の噂があったのは90年代中頃でしたかね。
その時は実際にレコーディングも進んでいたとか。
      
当時ジョン・ウェットンはソロとして活発に活動していた頃で、
わたしもアルバムは欠かさず買っていたし、来日すればライブにも行きました。
しかし本人の資質からか
ソロ・アルバムはプログレとは呼べないAOR的な内容。
ライブではUKはじめキング・クリムゾンやらASIAやらの代表曲を惜しみなく披露も、
どーにも“往年の大物歌手がドサ廻りしてる感”漂ってしまうのがやるせない。
どちらも悪くない、悪くないんですが、やっぱり物足りない、
いわば、“プログレするウェットン”に飢えていた、
ちょうどそんな時に持ち上がったUK復活の報だったんですね。
      
業界の裏方(?)に甘んじていた相方のエディ・ジョブソンも
なんかやる気出してるみたいだし、
これは期待するなという方がムリというもの。
しかし新作を今か今かと待ち続けるも一向に出る気配がありません。
その後も何事もなかいかのように続々とソロアルバムを出し続けるウェットン。
あげくはスティーブ・ハケットとGENESISナンバー演ってみたり。
他にやることあるだろ!とどのくらいの人がつっこんだことか
(それでもホイホイ観に行くところが悲しい)。
      
そうこうしてるうちウェットンのASIA参加などもありつつ
いつのまにか干支が一回り。
      
もうUK復活なんてだ〜れも考えてなかった2007年、
今度はジョブソンが動き出します。
自身のバンドUKZを立ち上げ。
UKをひじょーに意識したバンド名ですが
逆に“これでUK復活は確実になくなった”と確信しました。
ウェットンがすでにASIAの一員としても、ジョブソンがフリーなら
まだ万に一つUKへの道はあったかもしれません。
しかしジョブソンも自らのバンドを作ったとなると
もう二人が組むことは(少なくとも当分の間は)ない。
いくら名前が似ていても、ジョブソン一人では(同様にウェットン一人でも)
UKにはならないのです。
ライブではUKやKCの曲を演ったそうですが、わたしは未見。
このバンドにはむしろ過去にとらわれないNEWバンドとして期待していました。
そういう意味でも、その後派生したU-Z Projectにも落胆。
これってただの懐メロバンドじゃん……
      
しかしそこで潮目が変わってきます。
ポーランドでのライブに、ゲスト扱いとはいえウェットンが参加。
そうなると話が違ってくるからファンとは勝手なもの。
昨年11月には一部その時の様子も収めたライブ・アルバムも発売されました。
なんだかんだいって懐古的な自分ってどうなのよ?と思いつつ
だけどこの二人の共演を無視できない。
アルバム買おうか買うまいか、
そんなオヤジごころゆらゆら揺らめいてる最中に
突然発表されたUK再結成・緊急来日のニュース。
      
あまりにも突然だったのでチッタのメルマガに一瞬目を疑いました。
いや〜、びっくりしましたね〜。
しかしタイミング的にはどんぴしゃ。
結果的にU-Z Projectが絶好のプロモーションになったわけですね。
驚きは期待感に変わります。
このライブはなんとしても行かなければ!
      
と、ふつうならこのまま特筆することもなくライブ当日を迎えるわけですが
今回のミッション、ここからが一苦労。
      
まずはチケット争奪戦。
      
先行発売初日、新宿ディスクユニオンに向かうと
そこにはなにやら人だかりが。
はて、(近くの)BEAMSでバーゲンでもあるのかいなと近づくと
それにしては年齢層に違和感ありすぎ(笑)。
まさか……と思う視線の先で
行列がディスクユニオンへと消えていくじゃないですか。
プログレのチケット販売では初めて見る光景です。
あらためて思い知るUK人気の高さ。
そういえば、わたしらが高校生くらいの頃は
UKとか普通にFMで流れていたもんなあ……
どうせプログレ、とひとくくりにしていたわたしが甘かった。
もっと早く家を出るべきだったと後悔しても後の祭り。
残念ながら希望する土曜日のチケットは
わたしの遙か前で完売してしまいました。
それでも金曜日の席がゲットできたのはまだ幸運だったようですね。
その後の抽選発売も落選者続出の様子。
一般発売はもちろん瞬殺。
プログレ界(そんなもんあんのか)的には
ちょっとしたUKフィーバーが吹き荒れました。
まあ、はっきりいってハコが小さすぎたってことなんですが、
呼んでもらって文句はいえませんわな。
      
ようやくチケットも手に入れあとは当日を待つだけ〜
と安心したのもつかの間、3月11日、あの大震災が日本を襲います。
      
今年のプロ野球、わがマリーンズの開幕は仙台で対楽天戦。
じつは3月26日からのKスタ3試合、チケット購入済でした。
しかしそれどころではなくなってしまったのはご存知の通り。
UKと相前後して来日する予定だった
ホークウインドやアレアも早々に中止を決定しました。
御大ジミー・ペイジも来日取り止め。
彼のトークショーの会場は長崎。
英国政府から渡日自粛の勧告が出ていたとはいえ、この用心深さ……
      
しかしこればかりはいたしかたありません。
わたしも半ば覚悟していました。
いつUK公演中止のメールが来るのかと……
      
しかし、こんな時こそ立ち上がるのが憂国の四士!いやニ士!
しかも片方は
日本語の決めぜりふをかまし続けて30余年のウェットンです。
ブリティッシュ・ロック界随一の演歌の男です。
彼らは約束通りやってきました。
      
いろんな事を乗り越えて迎えたライブ当日。
もう、二人が同じステージに立っている姿が拝めさえすれば
あとは何もいいますまい。
なんといっても2人とも若くないんですから。
予習のためこの1ヵ月聴きまくった
70年代に録音されたブートのような脂ののりきったパフォーマンスは
望むべくもありません。
特に今世紀に入ってからのウェットンについては
一時かなりの酷評も耳にしましたしね。
      
ところがどっこい、演奏が始まってすぐに
そんな杞憂は吹き飛びました。
いきなり「In The Dead Of Night」「By The Light Of Day」
「Presto Vivace And Reprise」をイッキ演奏。
全員テンション高い高い。
ウェットンの声も想像以上によく出ています。
むしろソロの時より迫力が増してるかも。
あのでかくなった腹で増幅させているのか?
ジョブソンも相変わらずのテクニシャンぶり。
70年代のライブだってここまでスタジオ・バージョンに
忠実じゃなかったぞ!?というアレンジを難なくこなします。
必殺の透明バイオリンも健在!
一歩間違えばイタイことになりそうな
ファンタジックなルックスのこの楽器。
それを貴公子と呼ばれた30年前同様
なんの違和感もなく使いこなしてしまうとはさすがです!
      
そしてその二人以上に驚いたのが、マルコ・ミネマンのドラム。
かなりのテクニシャンらしいということは聞いていましたが
実際にプレイを聴くのはこの日が初めて。
テクニックもさることながら、こんなにもパワフルだったとは……。
      
わたし、ブラッフォード先生
(ホントはブルッフォードといわないと怒られますが)は大好きで、
参加アルバムは欠かさず買いまくる追っかけです。
でもUKだけはテリー・ボジオに一票!なんですよね。
わたしが思うUKの最高傑作は3人期のブート。
キーボードを中心としながら、ギターの抜けた穴を
ベースとドラムの手数&パワーでカバー、
カバーどころか倍返しでキーボードと三つ巴のバトルを展開、
〜なんていう演奏がUKの楽曲には合ってるような気がします。
というわけで
怒濤の弾幕を張りまくるミネマンのドラムは
わたし的には大歓迎。
      
少しだけ残念だったのは
ギターのアレックス・マカチェク。
あまりにもアラン・ホールズワースを意識しすぎたせいか
ちょっと精彩を欠いていました。
ソロ・アルバムではバリバリ弾き倒してますし
実力はあんなものじゃないと思うんですが……
ただもともとのバンドでもホールズワースは居場所なさげですしね
(そう、わたしは“UKにギターはいらない派”)。
それでもジョブソンがバイオリンに持ち替える時の空白を埋めたり、
ベースをユニゾンでサポートしたり
(ウェットンのベース、さすがに往年の迫力はなくなりましたね……)、
脇役としてしっかり演奏を支えていました。
      
演奏はたっぷり2時間以上。
サックスの代わりにバイオリンが入る「Starless」や
ブラッフォードの「Sahara Of Snow part2」も演ったりしてサービス満点。
もちろん、79年初来日以来のウェットンのオハコ、
「キミタチサイコダヨ!」も炸裂。
アンコールの時には今や伝説のUKコールも巻き起こりました。
アンコールはしっかり3曲。
オーラスはジョブソンのエレピのみの伴奏で
ウェットンが情感たっぷりに「Rendezvous 6:02」を歌い上げました。
正規版、ブート、ウェットンのソロ・ライブと
今までいろんなバージョンのRendezvousを聴いてきましたが
わたしの中ではこの日の歌唱が最高のものになりました。
      
次はぜひともこのメンツで新作を!と欲求は高まるばかり。
しかしお互いの活動もある中、これは叶わぬ願いでしょうか。
新作を出してこその“現役バンド”だと思うのですが。
ただそれはそれとして、
この日のライブ自体は想像を遙かに超えた大満足のライブ。
いろんな事が起きている今の日本に来てくれて、
心から感謝感謝のわたしとYさんなのでありました。
      
……じつはわたしたちも、ライブ前の腹ごしらえに
ラゾーナ川崎でぴょんぴょん舎の盛岡冷麺を。
祈、復興。
      
      
      
      

0 件のコメント:

コメントを投稿

フォロワー