2010-08-24

Heads are Burning! 〜燃ゆるご同輩〜

      
      
フジロックやサマー・ソニック。
若い音楽ファンにとって、夏はフェスティバルの季節。
わたしのようなおっさんにはあまり関係のない話だと思ってましたが
どうも今年あたりは様相が変わってきたようで。
      
フジロックにロキシー・ミュージック、サマソニにスティービー・ワンダーが参戦。
あきらかにおっさんの財布の中身を狙ってる臭いがぷんぷんします(笑)。
      
しかし頭ではそんな“仕掛け”がわかっていても、
手が勝手に財布の紐をゆるめてしまうのもまた、おっさんのサガでして。
ただ、さすがにロキシーのためだけに苗場には行けません。
そんな「夏フェス・ヴァージン」のおっさんにうってつけの企画が
22日、日比谷野外音楽堂で行われました。
      
「PROGRESSIVE ROCK FES 2010 プログレッシブ・ロックの祭典
〜めくるめく音世界への誘(いざな)い〜」
      
なんと日本で初めてのプログレッシブ・ロックのフェスティバルです。
      
参加ミュージシャンは四人囃子、ルネッサンス、スティーブ・ハケット・バンド。
3組だけっていうのがフェスとしてはちょっとさみしい気もしますが
まあ、最初ですから(次はあるのか?)。
      
てなわけで、このブログでももうおなじみ(?)、
プログレとモルトとアロハシャツをこよなく愛するYさんと二人、
行ってきました。
      
PM3:30 野音到着。
予想はしてましたが、まだまだ強い陽差しの照りつける座席は
ものすごい温度です。もちろんまわりはおっさんおっさんおっさんの大群。
危険!太陽光線に“地肌”を直撃される人多し!
思わず熱中症で搬送される人の出ないよう祈る…
わたしも帽子持ってきてよかったですわ。
      
まず一組目、四人囃子の演奏です。
すみません、不勉強で「日本の伝説のプログレ・バンド」
ということぐらいしか知りません。
音を聴くことすら初めてでしたが、かっこいい。なんか勢いがあります。
もちろんわたしらよりぜんぜん年上ですが、若々しいパワーが漲ってました。
日本のオヤジもまだまだがんばらねば。
      
続いてはルネッサンス。
ルネッサンスといえば一にも二にもアニーの歌声。
アニーといっても築地の卵焼き屋ではありませんぞ。
アニー・ハズラム。シルクのようなエンジェル・ヴォイスで魅了する
プログレ界屈指の歌姫です。
前回の来日のときは行ってないので
ソロ・アルバム(「ブレッシング・イン・ディスガイズ」)の
ジャケ写(ハイキーの加工がちょっとわざとらしい)が
わたしの頭の中のアニー直近の姿(それでも早16年前…)。













                         
おおお… ステージ上に表れた姿のあまりの肝っ玉母さんぶりに時の残酷さを痛感。
思えばアニーも還暦をとうに超えてるはず。
あの美声は聴けるのか? 不安が胸をかすめます。
      
しかし一発目、「プロローグ」の高音スキャットでそんな不安はふき飛びます。
すごい!伸びやかな高音が会場に響き渡る!
ある時はエネルギーにあふれ、ある時は優しく包み込むように歌う。
そのなんという圧倒的な存在感!(体型の話じゃないからね)
      
アンコール曲、「マザー・ロシア」。中盤の美しすぎるスキャット、
そしてクライマックスを朗々と歌い上げ、
そのままブレスなしでささやくようなフレーズを歌いきるエンディング。
全身鳥肌が立ち、不覚にも目頭が熱くなりましたよ。
Yさんと二人、ただただすごいの連呼。
      
フェス用の短いセットだったのがほんとに残念!
川崎のクラブ・チッタの単独ライブにも行きたかったですねー
(そちらが一般発売後すぐに完売してしまい、それでこっちを買ったのです)。
      
そしてトリはスティーブ・ハケット・バンド…… というところで、
MCのストレンジ・デイズ編集長、岩本晃市郎氏が
ジェネシス・ファンにはおなじみの
黒マントに逆三角のかぶり物をして登場、笑いを誘います。
でもどうせやるならマントの下に銀色のコスチュームを着ていて欲しかった!
そのくらいはやらないとあの場の客は楽しめませんぜ!
      
それはさておき、いよいよスティーブ・ハケット・バンド登場。
お、なんとハケットのほかにギターがもう一人います。
それも金髪でスタイルのいいおねーちゃん!
マイケル・ジャクソンといい、ジェフ・ベックといい
若い女性をバンドに加えるのが流行ってるんですかね。
しかし!あくまで演奏にこだわるのがプログレファン。
けっして姿形には騙されませんぞ!
…とかいいつつすでに目は釘付けになってるオヤジたち。
      
そんな彼女、残念ながら演奏自体は終始控えめ。
なんと言ってもギターはハケットがメインなわけですから、これは仕方ないでしょう。
ただし、ヴォーカル(コーラス)としての貢献度は大。
そしてこのバンド、キーボード以外みんな歌うんですね。
音域が狭く正直あまりうまくないハケットのヴォーカルをみんなで盛り立てます。
      
じつはソロになってからのハケットをそれほど熱心に聴いていなかったわたし。
初期を中心に数枚しか持ってません。
その原因の一つが、たまに入る彼のヴォーカルでした。
「自分で歌わなきゃいいのに」とずっと思っていたんですね。
ギター・サウンドや紡ぐメロディーのすばらしさには
文句の付けようがないんですから…
(その証拠(?)に、3人のすばらしいゲスト・ヴォーカリストを立てた
2枚目の「プリーズ・ドント・タッチ」は
むしろわたしのフェイバリットの一つになっているほどです)
      
しかし今回のライブでは“ほぼ全員コーラス”の力業で
ヴォーカルの弱さを克服。さらに演奏のよさ
(なかなか手数王のドラムとリッケンをバキバキ弾き倒すベース!)
との相乗効果で大迫力のかっこよさです。
      
そして言うまでもなく、ハケットのギターは唯一無二。
      
「フライ・オン・ア・ウインドシールド」では
“やっぱりジェネシスのギターはこの音じゃないとダメなんだ”と
しみじみ再認識。
そして曲の後半、ドラマーがリード・ボーカルを取り始めます。
ここでも“やっぱりジェネシスのヴォーカルは…”と一瞬頭をよぎりますが
まあそれは言わぬが花でしょう。
あんな絶対的カリスマ変態ヴォーカリストと比べられたらかわいそうです。
それに、この彼のがんばりのおかげで
われわれは最後にすばらしい贈り物をもらうことになるのですから。
      
ステージが暗くなり、流れてくるピアノのイントロ…
そう、それは「ファース・オブ・フィフス」!
      
いや〜、まさかこの曲がフルコーラスで聴けるとは!
それもドラマーの彼がヴォーカルでがんばってくれたおかげ。
…とはいえ聴き所はもちろん、すべてのプログレ者の心をわしづかみにして離さない
泣きまくるギターソロですけどね。
      
Y氏曰く「ハケットはテクニックをむやみにひけらかさない、
だけどすごいギタリストだよね」と語ってましたが
わたしもまったく同感です!
ふつう、ライブでこれだけ長いソロパートがあると
世のギタリストたちは、ここぞとばかりにアドリブのフレーズを加えたり、
無駄に小難しい技を誇示したがるものです。
しかし彼は一切そんなことをしません。
ほとんどレコードと変わらないフレーズを、しかし情感たっぷりに奏でます。
以前何かで、ハケットのそういうところが物足りないと評する人がいましたが、
的外れもいいところですね。
この曲のギターソロは、もはや手を加える余地などない、
緻密に構成された完成品なのです。
間違いなく、彼はその“完璧な美しさ”に自信を持っているのでしょう。
そしてわたしたちも、その“完成された美しいギターソロ”を聴きたいのです。
      
…「ファース・オブ・フィフス」の余韻に酔いしれながら、
ラストはソロからの曲で大団円。
会場全体拍手の渦。そしてスタンディング・オベーション。
      
みんなすばらしいパフォーマンスでした。
ただひとつだけ、残念というわけではありませんが
これをやってくれたら最高だったのに!と思ったのが
アニーとハケット二人による「リプルズ」。
彼女は以前、ジェネシスのトリビュート・アルバムで
この名曲を歌っているのです。
さすがにそれは欲張りすぎだろうというのはわかっていましたが、
心のどこかでほんのちょっと期待していたのもまた事実。
      
これはやはり、PROGRESSIVE ROCK FESが
第2回、第3回と続いていくことに期待しましょう。
そうすればいつか、アニーとハケットに限らずとも
そのような奇跡のジョイントをこの目で観、
この耳で聴ける日が来るかもしれませんからね。
      
とまあ、こうして
満足と感謝とそして飽くことのない欲望を我々の心に残し、
おっさんが最も熱く燃えた一日が終わったのでした。
      
・・・・・・・・・・・
      
さて、燃え尽きたあとは腹が減るもの。
フェスのあとは自宅近くの焼肉屋へ直行。両家の奥方を交えて夕食です。
わが家にとっては久しぶりの焼肉。
うちのパートナーは大の肉好きなんですが、
わたしが昔ほど肉食じゃなくなったもので…
      
てなこともあり、“奉行”はYさんにお任せ!
熱く燃えたハートを炭火に変えて、繰り出す華麗なトング捌き。
“しまちょう”、うまかった〜!
絶妙の焼き加減に感動です!
      
………じつはY氏、
プログレとモルトとアロハシャツのみならず
焼肉にもこだわる男だったのです。
      
      
      
      

2010-08-20

アスファルト・クローラー 2010。

      
      
暑い!暑すぎる!
      
新潟育ちのくせに寒いのが大の苦手、
そのかわり暑いのはけっこう嫌いじゃないはずのわたしですが
今年はさすがに少々バテ気味です。
      
街を歩くときに、遠回りでも地下街を歩いたり、仕方なく地上に出ても
わざわざ日陰の多いルートを歩いたりするようになってしまいました。
若いころなんて、汗をかくのもぜんぜんおっくうじゃなかったのになあ。
…おっと、これはもしかしてただ単に歳をとってしまったってことですか?
ま、歳のせいでも温暖化のせいでもくそ暑いことにかわりはないし。
今年の夏は、いつもよりしんどいわ〜。
      
ちょっと前ですが、麻布税務署と港都税事務所へ
もろもろ申告書類を提出しに出掛けたときはホント、死ぬかと思いましたよ。
電車なら一駅だし、ランチついでに歩いて行くかなんて、完全になめてました。
歩き始めて2分で後悔。
事務所のある赤坂から乃木坂を抜け六本木へと向かうルートは
微妙に青山墓地や檜町公園をはずれ、ただひたすら外苑東通りを歩くのみ。
アスファルトからの照り返しで体感温度は40度以上か。
しかも麻布税務署と港都税事務所、最寄り駅は同じ六本木でも
90°方向が違っていて、その上遠い遠い。
「国と都で管轄違うのはわかるけど、
利用者のことなんかカケラも考えとらんじゃないか!!」
と、なんだか怒りもこみ上げてくる
(そんなことは承知の上で出掛けたはずなのですが)。
      
さすがに六本木のど真ん中、熱中症で倒れてはシャレにならんと
AXISのリビングモチーフでキッチンウエアを眺めてひと休み、
ABCでファイドンの「シルバースプーン」を立ち読みしてひと休み。
ちょっとずつ休みを挟んでどうにか死の行軍を完遂。
なんか小さな達成感。でも来年はぜったい郵送にしよう…
      
おっと、そういえば昼飯がまだだった。
空きっ腹をかかえて飛び込んだのが六本木の中国飯店。
じつは酢が苦手で冷やし中華はあまり食べないのですが
ここにはゴマだれの「棒々鶏冷麺」があります。
とにかく冷たいモノを!と迷わずオーダー。
思ったより上品な味で、暑さにやられた体にはちょうどよかったかも。
とてもおいしかったです。
この日の苦行がちょっと報われた瞬間でありました。
      
この感動を忘れないうちに!
さっそくわが家でも作ってみました。
        
↓盛りつけはまったくかなわない…(味はもっとだろ)













                              
家で作る棒々鶏ソースは、どうしてもゴマの粉っぽさが残ってしまう。
どうしたら店のようなクリーミーさになるんですかね。
それと、もう一つ素朴な疑問。
白髪ネギを水にさらすとくるくるになってしまうんですが
どうすればまっすぐきれいにできるんでしょう?
普段、ニワカ知識をひけらかしてるくせに
じつはこういう基本的なことを知らなかったりするところが
日曜料理人のかっこわるさだよな…
      
翌週、残った棒々鶏ソースで「冷やし坦坦ソーメン」。
たまたま行ったスーパーにタレ付きの中華麺しかなかったんで
自宅にあるソーメンで作ってみました
(タレを残しても使うことなく捨てていたので
以前からもったいないと思っていたんですね)。













                              
上にのってる炸醤はじつは肉を使ってません。
肉の代わりはグルテンミート。
といっても嫁がマドンナ目指してるわけじゃないっすよ。
スーパーで買い物したあと立ち寄らなければいけないところがあって
この炎天下で挽肉はやばいな…と思い、試しに買ってみた次第。
細かく刻んで挽肉に見立ててみるも、このままじゃどうにもまずそうなんで
干しエビ、干し貝柱、干し椎茸の乾物オールスターを投入してます。
      
スープは昆布から取り、酒、味醂、醤油で味を調整。
      
炸醤も魚介系の乾物のうまみが主体ですし、和風のスープとも相まって、
結果、ソーメンによく合いました。
棒々鶏ソースも適度にコクをプラスしてますし。
まずまず成功じゃないでしょうか。
…相変わらずネギはくるくるしてますが。
      
それにしても、グルテンミートのおそろしいまずさにはびっくり!
乾物と甜麺醤でなんとかまとまりましたけどね。
しかしあんなもん食べるくらいなら、
豆腐のほうがはるかにいいと思うんだけど。
うまいし。安いし。
      
そうか。
よ〜く水を切った豆腐を細かく砕いて
それを挽肉代わりに炸醤作るっていうのもありかもしれないな。
今度試してみよう!
      
その炸醤使って麻婆豆腐とか。
      
ん? それってもしかして豆腐&豆腐?
      
………ただの肉ナシ麻婆豆腐じゃん!
      
      
      
      

2010-08-09

ラジオ酢豚の悲劇。

      
      
ついにNHKがやりました。
      
FMにて「今日は一日プログレ三昧」と題し
8日の午後12時15分から9日午前13時ちょうどまで、
12時間と45分間、プログレのリクエストのみをかけ続けるという
暴…いや快挙を成し遂げました。
      
前半のゲスト、KENSOの清水さんがオタ…いや、博識なのは知ってましたが
関根史織さんといううら若き女性、
Base Ball Bearというバンドのベーシストだそうですが、
なんなんですかこの子は!!
      
女性にも聴いてもらいたいかわいい曲です、とかいって
ゴングの「マスター・ビルダー」って…(笑)。
で、めちゃハマってるのがサムラ・ママス・マンナですか。
…畏るべし。
      
そして「プログレ諸国漫遊」というコーナーでは怒濤の辺境系3連発。
3曲も続けられると、どこまでがどの曲なのかまったくわからん!
しかも、唐突にフレーズが繰り返されるところなど
「さすが辺境(何がさすがだかよくわからないが)、変わった構成だなー」
と感心して聴いていたら
曲のあとにレコードの音飛びを謝ってるし。
まぎらわしいじゃないか!
      
そして極めつけの
アルタード・ステイツによる「宮殿」完コピ・生ライブ。
インプロ部分もレコード通り完全再現という、
意味ないようなあるような、この矛盾撞着ぶりがプログレっぽい。
すさまじい演奏が意味論的カオスにさらに拍車をかけます。
      
…あまりの内容の濃さにビビリながら聴いてましたが
さすがに13時間近い長丁場とあって
後半はちょっとパワーダウン。
特にラスト1時間を切ってからの選曲はもう少し考えて欲しかったなあ。
カンサス、ラッシュ、UK…。わたしも好きですが、
この時間帯でかけるべきじゃなかった。
聴いてる人たちみな、「VDGG、カーヴド・エア、(その他もろもろ
それぞれご贔屓のミュージシャンたち)」は、かかるのか?
と、固唾を呑んで待ちかまえているところに
「ナッシング・トゥ・ルーズ」じゃ、そりゃズッコケますって。
MCの山田五郎さんはカンサス、ラッシュで完全にテンション下がっちゃってるし
(彼は自ら“ヨーロッパ偏重主義”といってましたね)。
もっと番組の前半、導入のあたりで軽めにかけてくれたらよかったのに。
彼らに対するこの扱いは、わたしなんかからすると
逆に愛がないんじゃないかと思ってしまうわけです。
      
とはいえ、よくぞやってくれました。
10代のころは音楽との出会いの場としてかけがえのない存在だったラジオ。
それがいつからか露骨なプロモーションが幅を利かせるようになり
この20年余りは“ラジオで音楽を聴く”ことをすっぱりあきらめていました。
でもまあ、せっかくチューナーも買ったことだし
これからはまた、たまにラジオも聴いてみますかね。
      
      
↓プログレ三昧聴きながら作った黒酢酢豚。
 からめるタレが少なすぎて失敗。
 しかも棚から皿を出すときにあわててしまい、隣の丼が落下して大破。
 …「宮殿」生ライブをちゃんとリビングで聴きたかったんだよ!













                         

2010-08-03

星を往くもの。

      
       
またひとり、好きなSF作家が星々の世界へ旅立ってしまいました。
ジェームス・パトリック・ホーガン。
7月12日、享年69歳でした。
      
前回のブログでプログレ・オールタイム・ベストの話をしましたが、
この作家のデビュー作「星を継ぐもの」は、
わたしのSFオールタイム・ベストかも。
出会ったのは大学生の頃。
眠るのも忘れ(ついでに講義も!)一気読みしたのを憶えています。
ことこの本に関しては、以前紹介したテッド・チャンみたいに
「文学的相克が…」とかなんとかいう面倒な言葉は一切不要。
とにかく面白い!の一言!
       
月面で“5万年前に死んだ宇宙服を着ている人類の死体”が発見される。
そんな摩訶不思議な事件を発端として
全篇、謎に次ぐ謎、推理に次ぐ推理。
そして最後にたどり着く、人類、いやいや太陽系の成り立ちをも巻き込む
驚天動地の結論、さらにだめ押しの一手。
まさにカタルシスの塊みたいな小説です。
      
あまりにも面白いので、ほとんどSFを読まない人に
きっかけになればと薦めたりしたこともあるんですが
どうもいい反応が返ってきたためしがない。
これこそこの本における最大の謎といえるでしょう。
      
さらに、わたしなんかは常々
ハリウッドはホーガン作品をこそ映画化すべきだ!と思っているのですが
これまたそんな気配もないのが不思議です。
少なくともディックなんかよりよほど映画的なんですがね。
「トータル・リコール」が再映画化されるそうですが、
いいかげんもう“ディック原作のディックらしくない映画”はいらんでしょう。
      
謎解きがほとんど会議室でなされていく(笑)「星を継ぐもの」は
さすがに映画化しづらいでしょうが、他の作品、たとえば
「造物主(ライフメーカー)の掟」などは非常に向いてると思うのです。
      
“突然変異”した“自動工場”が土星の衛星タイタンで進化し
機械生命による独自の生態系を形成。
その中で最も進化したグループは文明を持つにいたり、
そのレベルは人類史における中世ヨーロッパにそっくりだった…
薄暗い氷の大地の上(でもそこには、その環境に適応した
“植物”や“獣たち”が息づく“自然”がある!〈もちろん、全部機械です〉)を
どこか中世の甲冑に似た機械たちがガシャガシャと歩き回るなんて
メチャメチャ“絵”になると思いませんか?
ちゃんとアクション場面もありますよ。
しかも、“機械生命=人類の脅威”として描くような
ありがちなストーリー展開ではありません。
むしろ怖いのは人間側の思惑。
それをなんとか食い止めようとするのが
うさんくさい心霊パワーを売り物にする詐欺師チームという設定も
ちょっとひねりが利いてます。
異世界、異様だけど愛すべきキャラクター、陰謀、アクション、
そして大団円。さらに続編もあるので当たればシリーズ化のおまけ付き!
いや〜、ヒットの要素てんこ盛りなんだけどなぁ〜。
ハリウッドのお偉いさん、どうして気付いてくれませんかね?
      
90年代以降は、度を過ぎたオプチミズムと政治思想、
果ては“トンデモ学説”に傾倒したり…と
ちょっとついて行けない感じもあったホーガンですが、
それでも初期作品の輝きが失われることはありません。
たしかに初期にも見られる楽天性は(今の目では特に)
ナイーブすぎるといわれてもしかたないでしょう
(以前提示したわたしの定義からすれば“過去の傑作”ですね)。
でも、「ホントにこんな世界になったらいいのに!」と
素直に思えた若いころの自分がいたこともまた事実。
わたしにとっては、そんなノスタルジーもちょっと込みで
かけがえのない傑作たちでありました。
      
ご冥福をお祈りします。
      
      
      
      

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